ぼさとの定規

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【阿佐海岸鉄道DMV導入へ】珍しいものが本当に観光資源になるのか。大切なのは「人を楽しませる」という基本だと思う。

zuuonline.com

JR北海道が開発し、まだ実用化されていないバスと列車の要素を併せ持った鉄道車両DMVデュアル・モード・ビークル - Wikipedia)を高知、徳島県を結んでいる鉄道、阿佐海岸鉄道で導入することが決まったようですね。

阿佐海岸鉄道は約8.5kmの鉄道会社で国鉄時代に日本鉄道建設公団によって室戸岬をぐるっとまわり、徳島県牟岐町牟岐駅から高知県南国市にある後免駅を結ぶ路線として建設されていましたが、1980年代の国鉄再編問題絡みで工事中であったこの路線の建設が中止されてしまいました。

しかし、高知側と徳島側からすでに完成している区間があり、国鉄解体を期に高知側は土佐くろしお鉄道阿佐線となり、そして徳島側はこの阿佐海岸鉄道阿佐東線となりました。

この記事の中でDMVが世界で初めて営業で導入する鉄道になることで、その物珍しさから観光資源につなげたいと阿佐海岸鉄道の専務が述べています。

阿佐海岸鉄道の岡本真一専務は「車両自体が観光の目玉になり、交流人口の拡大に期待が持てる。地域観光活性化の起爆剤としていきたい」と力を込めた。
(引用:線路も道路も走行可「DMV」を地方三セク鉄道・阿佐東線が2020年導入へ | ZUU online

DMVを導入することによってバスになり、病院など地域拠点からモードを変えて鉄道線に乗り入れて地域の足にすることはもちろんですが、レールがなくてもどこへでも行けることを生かして、約40キロ離れている観光地、室戸岬まで運転して観光客を呼び込みたいとのことですが、正直、私は一点もの重視で安直な考えではないかと感じました。

この阿佐海岸鉄道の施策としてはDMVを導入し、物珍しさから観光客を誘致することができるというものです。それだけでは味気ないので室戸岬まで延長運転するというものですが、鉄道目当ての観光客(いわゆる鉄道マニアなど)を簡単に囲うことができるのでしょうか?
2000年代以前なら成立したかもしれませんが、今の時代は物珍しさだけでは顧客を獲得する動機付けとしては薄いと思います。

ただでさえ、現代の観光目当ての鉄道は列車に斬新な付加価値をつけなければ注目されることはありません。(例:JR九州特急A列車で行こうなど)
ただの物珍しい列車みたいなマイクロバスで移動するということだけでは付加価値を見出すことが難しいです。(だからと言って、DMVを観光用に改造すると本来の趣旨である地元利用に支障がでます)

このことのみならず、日本の自治体や第三セクターなどが考える「観光」という概念が昔のままの価値観で止まっており、安直すぎる考えが多すぎです。

珍しいハコさえ作ればいいって問題ではありません。観光の要素を開拓してこその観光地化することができます。DMVに乗るだけで果たして「人を楽しませること」ができるのでしょうか?
乗って感動的な体験を与えることができるのでしょうか?
ついつい厳しい目で見てしまいましたが、一見の観光客より、普段利用する地元の方にどのように運用すれば利便を提供できるかを考えるほうが優先度は高いはずです。

DMVという新しい取り組みをつぶさないためにも観光客誘致という欲を出さずにあくまでもおまけ程度で考えて取り組んだほうがいいのではないかと思いました。

それでは今回もこれでお開きです。

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