ぼさとの定規

元書店員ぼさとが社会のこと、書店のことなど、思ったことを書いていきたいと思います。

【本の流通解説】Amazonが出版社から直接取引することで、アマゾンで頼んでも発売日当日に新刊が届くようになるようです。元書店員が出版社、Amazonのメリットを考えてみた。

www.fnn-news.com

 

このニュース、小さく報じられていましたが実は出版業界ではかなりの激震だったのではないのでしょうか?
アマゾンが直接出版社の倉庫へ集荷に回ることによって本の問屋を経由する時間的ロスをなくすことが目的のようです。
本当にこれをAmazonが始めてしまうと出版業界で慣例だった流通ルールを壊す突破口になる可能性があります。

これが、どうして業界のルールを壊すことになるのかを考える前に、まずは本がどうやって書店まで届くのかを解説したいと思います。

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(引用:本はどうやって書店まで届くの?意外と知らない「本が流通する仕組み」 : 出版・書店業界がわかるWebマガジン KOTB(ことびー)

図のように出版社から取次店(本の問屋さん)を経由して書店に流れ、お客様の手に渡るシステムになっています。本を仕入れるルートは二つあります。

1.取次店(問屋)を通すルート

このルートの場合の本一冊当たりのマージンはおおよそ以下のようになっています。

・出版社70%
・取次店10%
・書店20%

つまり、問屋を通して本を仕入れると10%の手数料がかかります。その代りに書店は売れ残った本を問屋を通して返品することができます。
また、仕入れや返品によって発生した煩雑な清算業務も問屋が代行してくれます。そのようなサポートがあるため、書店では低粗利ではありますが、書店側は売れ残った商品を返品することができるという低いリスクで運営することができます。

2.出版社から直接取引するルート

このルートは図の左側の矢印で記されているルートです。出版社から直接書店が仕入れる方法(直取引)です。
この方法の大体は出版社から本を書店が買い取ることで仕入れることができるルートになっています。(普通の小売りの仕入れ方と一緒です)
この場合の書店の利益は問屋を通さない分、上記の取次店分10%のマージンがそのまま書店のほうに上積みされて30%のマージンになります。

このようになっています。日本の本の流通システムはほかの業界と違って、仕入れた本を返品できる特殊な形態をとっているため、出版不況の現代では書店のマージンを少しでも上げるために返品できるシステムを廃止すべきだという議論がたびたびあります。

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今回報道されたAmazonが出版社へ直接取引というのは上記2番のルートになります。出版社とAmazonがどのような契約を交わすのかは明らかではありませんが、おそらく、商品を買い取る代わりにAmazonが直接出版社の倉庫に商品を集荷しに行くという条件を出すことで、出版社としても商品が返品されないということと、問屋へ出荷する経費を持たなくていいという利点があるかと思います。
Amazonにしても今まで、発売日当日に商品をお客様に届けることができるようになるほか、マージンも取次を通すよりも上がるはずなので出版社、Amazon双方にメリットがある取引になるかと思います。

これは出版社にとってもメリットなので、賛同する出版社が多数あると私は思います。
書店、取次店はその分反発するかもしれませんが、今まで返品できるという条件に甘えてきている面があるので、一度、初心に戻り「書店は本を売る場所としてどのように魅力を作っていくか」「どうしたら仕入れた商品を売り切ることができるか」「どうすれば過在庫にならないか」を今一度精査して商売をすべきだと私は思いました。

それでは今回もこれでお開きです。

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