ぼさとの定規

元書店員ぼさとが社会のこと、書店のことなど、思ったことを書いていきたいと思います。

【元書店員解説】本屋にあるイスに座って本を読むことはどこまでが許容範囲なの?

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最近の書店はベンチを置いている店舗も増えてきました。さらにそこから発展してカフェ併設でイス、テーブルを置き、購入前の商品を「座り読み」をしてもOKだよというスタンスが書店のスタンダートになりつつあります。

しかし、長年書店では立ち読みすらタブー視していたこと(昭和のマンガであるハタキを持って立ち読みしているお客さんの横で掃除し始める感じ)もあり椅子が併設されている店舗ができ始めた当初はそれが話題になったりもしました。

イスが置いてある書店ができて15年以上経っているものの、「新品で売り物の本をゆっくり読む環境を与えていいのか」という倫理的に問題視する人がまだまだ多いかと思います。

また、イスを設置している大半の書店では「ご自由に座りお読みください」程度しか書いていない案内しかなく、一冊の本を読破していいのか、イスをどのくらいの時間まで占領していていいのか、新品の本をぼろぼろにしてしまうと申し訳ない、新品の本を破損させたり、汚したりしたら弁償になるのかなど、顧客側にとっても不安要素がたくさんありますよね。

さて、ここから結論です。

イスを設置している多くの書店では正直、社内でのルールなど明確なルールは存在していないと思います。少なくとも私が経験した全国チェーン2社ではマニュアルなどには記載はありませんでした。
なので、お客さんが何時間もイスを独占していようが、一冊の本を読破していようが基本的には声をかけないということです。

なので、イスに限りがあるのでお客様同士で譲り合って使っていただければOKです。一冊読破も時間が許す限りしてもOKです。読んで気に入ったらぜひそれを買っていただけたらと思います。

そうすると、新品商品にキズや汚れが付く恐れがありますが、

ぶっちゃけてしまうと本を汚されても、ボロボロにされても書店にとって大きなリスクになることはありません。

理由は簡単です。ある程度のキズや汚れがあっても出版社に本を返すことができるからです。出版社に返品するとその分のお金もちゃんと書店に戻ってきます。
中には汚破損がひどすぎて返品できないものや、元々返品する契約を結んでいない出版社の場合は廃棄処理をすることになるので確かにリスクはあるのですが、そんな商品の絶対数のほうが少ないので数字で言えばエラー程度の痛みしかありません。

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また、お客様が複数回同じ本を手に取る確率も低いと思います。数十万冊ある本から複数回、お客さんが手に取る本は話題の本や雑誌が多く、そういった本は複数冊在庫を持っており、キズや汚れがある本は自然と売れ残りますが、それがあるのはホントに数冊程度です。

たとえば、週刊少年ジャンプも膨大に入荷して週末売れ残っているのは立ち読みされすぎてボロボロになっているものがほとんどです。

また、棚に1冊だけ差さっている商品がお客さんが手に取ることは本当に稀です。大体の新刊書店の棚にある商品というのは、一年に1回売れたらいい商品を棚に入れているので、その一年の間にどれだけの人が立ち読みをしたかなんてたかが知れているといえます。
基本、1年以上売れていなければ返品して別な商品に入れ替えてしまいます。(つまり文庫などの定番品は1年に1回は売れているものが多いです。)

もし、棚に汚破損している商品があればすぐに返品に回して、新しい商品を注文しなおしています。本体が大丈夫で表紙だけ汚破損している場合は出版社から新しい表紙をもらうこともできます。
それを通常業務として行っているのでひどい汚破損品はあまりないかと思います。

イスを書店に導入した当初は売り上げ減少や上記のような小さなリスクを恐れて、イスの数を少なく設置したようですが(おそらく、頭の固い社内での反対派を抑えるためという理由もありそうですが)結果として、座り読みをしてトラブルが発生するのはごく稀であることや売り上げに影響がない(そもそも売上が下がっていて検証できない)など理由に書店側的には小さなリスクについては黙認という状態になっています。

2010年代に入ってからはより、書店でも気軽に座って自由に本を読んでもらいたいというスタンスを全面に出して書店を快適な場所を売りにする傾向になっています。大量にイスやテーブルを置き、おしゃれな空間演出をしている蔦屋書店がその流れの先祖的な書店ですね。

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(写真は函館蔦屋書店です 引用:函館 蔦屋書店 | 函館蔦屋書店がめざすのは、これからの時代のスタンダード。

こういう書店は2010年代に入ってから少しずつですが店舗も増えており、顧客側にある倫理観の壁を少しずつ取り除いて、後悔しない買い物を後押ししたり、気に入った本を見つけることができる環境つくりをしていくような流れになってきていると思います。

今度本屋さんに入ったときには気軽にイスに座って気に入った本を思う存分選んでいってください!

それでは今回もこれでお開きです。

 

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